##### 寛喜島(かんきじま)（庄）・天保(てんぽ)（五ケ・天正・筏） **寛喜**は、寛喜年間（一二二九～）の庄川の洪水でできた島（弁財天社境内・弁財天公園一帯をいう）といわれ、天保は、天保年間（一八三〇～）に開墾された土地といわれている。

##### 土居野島(どいのじま)（天正）土居野とは、南北朝時代、南朝方で活躍した**土居氏の一族**あるいは一派が住んでいた土地といわれるが、『『土居』は『舘』のめぐりの土塁(どるい)のことか。あるいは、ドイは、樋で水を引き開墾した土地のことをいうのかも知れない。

##### 堀金(ほりがね)（青島）勧帰寺の**堀金氏**が、水島（小矢部市）の勝満寺の道場として、初めて一宇をひらいた土地といわれている。あるいは、堀は水たまり、金は地味のやせた土地という意か。旧二万石用水（野尻岩屋口用水）路に近い一帯である。

##### 鬼子島(おにこじま)（五ケ）鬼が住まいするほどのこわいところであったのか。むかしは、雑木や薮が生い繁っていたところで、比較的遅れて田地に開墾されたところといわれている。あるいは養育困難な生まれたばかりの赤子を捨てた場所か。いずれも伝承の地である。その他、現在小字名にない地名に次のものがある。

##### 鉄砲町(てっぽうまち)（庄）壇ノ城下にあって、**鉄砲鍛冶**(かじ)（あるいは鉄砲方＝家来）が住んでいたところか。

##### 鍛冶屋橋(かんじやばし)（金屋）百姓の鍬・鎌などをつくる金大工（鋳物師）が軒を並べていたところという。この地は庄川小学校グラウンドの北側、新用水左岸の細長いところである。橋とは、どことどこを結ぶ橋か。この地に鋳物師が住んでいたとすれば、およそ五、六百年前、南北朝から室町時代にかけての頃である。**新用水**が引かれたのが、およそ七百年前（鎌倉時代中期）というから、この用水に掛けられた橋で、段丘崖下の「畑直」と結ぶ橋のことか。前章で述べたように、「**金屋**」の地名が、金大工（鋳物師）に由来するとすれば、この鍛冶屋橋地区は、当時、村の中心的存在であったのか。伝えによると、その昔、金屋村はおよそ一千戸有余の戸数を数え、にぎわっていたが、悪疫流行により、防止のすべもなく住民は離散し、一時は、二、三〇戸までに減ったという。この地に住んでいた金大工は、庄川沿いに下流へ逃れ、**西部金屋**（高岡市戸出地区西保金屋）へ移り住んだという。その後（天保の頃一六四四～）西部金屋村の金大工藤兵衛ら二人が、庄川の川原（保養センター舟戸荘付近か）を開墾（草高約四〇石）し、西部金屋村領としたが、およそ一〇年後、一〇軒の新村を立て、「青島新村」と称した。しかし、一五年後に金屋岩黒村領となった経緯があることは、庄川町の金屋と西部金屋との因縁を物語っているようである。

##### 紺屋谷(こんやだに)（庄）庄の中央部、東にある谷で、谷間より流れ出る水は、一種の色素を含んでいたので、住民の多くはこの水で白布を染めた。しかし、この水は、明治のはじめころから枯れてしまったという。

##### 銭瓶谷(ぜにがめだん)（庄）庄地内の東南にあり、昔ある金満家は、盗賊を恐れて金・銀貨をカメに入れて、人の知れない土中に深く埋めたという。その金満家は急病で死に、ついに掘り出されないままに終わってしまったという。

##### 唐津山(からつやま)（庄）庄の中央部、東にある山で、そこには**白色を帯びた陶土**(とうど)があった。明治のはじめころ、能登から陶器職人を雇入れて陶器を焼いたが、採算がとれず間もなく中止した。それらのカケラは、その後もなお放置してあったという。

##### 鳥越山(とりごえやま)（金屋）国道一五六号線を金屋から小牧に向かうところ、三楽園の後背地一帯をいう。同地には用水の守護神をまつる井堰(いせん)神社や上水道の給水池があるところ。三楽園の泉源発見の伝えに、傷ついた渡り鳥がしばしば休んで、谷間の湧水で傷をいやし、元気になって再び山を越えていったという。この泉源から引湯して、初め「鳥越(とりごえ)の湯」と呼ばれていた。今の三楽園の古名である。

##### 石屋島(いしやじま)（金屋）庄川左岸、舟戸ダムの上流側で本流と旧用水路（二万七千石用水）に挟まれたところ。対岸の寒原山の中腹から『**金屋石**』が本格的に採掘されはじめたのは天保年間（一八三〇～）である。切り出した石材は、左岸より川原、中州で荒加工（第一次加工）をした後、それぞれの金屋の石屋さんに運ばれた。その後舟戸ダムの完成で、中州のほとんどは水没し、今ではその一部のみが残され、一軒の石屋の作業場がある。対岸の中腹から石材を運ぶ**索道**（ロープ）が、昭和三〇年ごろから引かれ、運搬の合理化がはかられたが、今では、石屋の後継者不足などから、以前の隆盛は全く見られない。

##### 松ノ下(まつのした)（金屋・青島）そのむかし、舟戸地内の新用水と二万石用水に挟まれた、南北におよそ一〇〇メートル、東西におよそ一五〇メートルの地域に、加賀藩の「**金屋材木御囲場**(おかこいば)（貯木場）」があった。創設は寛文四、五年（一六六四、五）ころといわれ、周囲は土塁と堀が築かれ、土塁には相当数の松が生い繁っていた。この土塁の下(しも)、すなわち北・西側の二万石用水ぶち一帯の俗称である。この貯木場は、今からおよそ二〇〇年前には機能がなくなったとされるが、松の大木は、その後一〇〇年ぐらい残っていたといわれている。

※　このページは、榎木淳一『村々のおこりと地名』〈地名のルーツ＝庄川町〉（1979年）をもとに作成したものです。

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村々のおこりと地名㉑

〈地名のルーツ＝庄川町〉 榎木淳一

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